真剣と模造刀の区別はつきますか?
一度でも、本物の日本刀を手に持った方ならすぐに違いがわかるはずです。
日本刀にあまり縁の無い方に同じ質問すると、刃が付いているのが真剣で、刃が付いていないのが模造刀と答える方が多いことに、僕はガッカリします。
簡単に説明すると、真剣とは刀鍛冶が日本古来の製法で造られた鋼を鍛えて作ったもので、模造刀は鉄以外の材料で日本刀に似せて作った物で素材や製法がまったく違います。
そもそも、刀鍛冶は真剣という言葉をほとんど使いません。理由は、模造刀を作ったり扱ったりしないからです。
皆さんは、生きた犬とヌイグルミの犬を区別して、ヌイグルミの犬、生きた犬と呼ぶことは無いはずです。犬と言ったら、生きている本物の犬で、それと区別する為にヌイグルミという言葉を使うはずです。
同じように、私達刀鍛冶は本物の日本刀を真剣、おもちゃの日本刀を模造刀と呼ぶ必要がありません。日本刀は本物を指し、模造刀がおもちゃの日本刀なのです。
では、なぜ日本刀と模造刀の違いがわからない人が多いのでしょうか?
今の日本の社会では、興味が無ければ日本刀をちゃんと見る機会が少ないことが一番の原因だと思います。
犬とヌイグルミの区別がつかない人は居ないはずです。それは、本物の犬を見ているので、一見したらすぐにヌイグルミか犬か区別がつくからです。同じように一度日本刀をしっかり鑑賞する機会があれば、その後の人生で日本刀と模造刀の区別は、犬とヌイグルミを区別するぐらい簡単なことです。