皆さんは鉄を鍛えるという言葉を聞いたことがありますか?
たまに包丁屋さんで、この包丁は本作りで鍛えた物だから・・・・などと耳にすることがあります。
この鉄を鍛えるという事は、どのような事なのでしょうか??
現在、包丁屋さんで良く使われている鍛えた物とは、鍛造で造ったものを指します。
でも刀鍛冶からすると、鍛造を指して鉄を鍛えた物と言うには抵抗があります。
ところで、鍛造ってご存知ですか?
鍛造とは、槌で叩いて形を作る作業を指します。日本刀の製作では、この鍛造の作業を火造りと呼びます。
鍛造の利点は2つ。
1、叩いて形を作るので、削る量が少なくて済む。
2、何回も叩いて形を作る間に、鉄の結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高める。
ようするに、鉄を削って形を作るより、叩いて刃物の形にして最小限削った方が、刃物として切れ味が増します。
刀鍛冶の言う鉄を鍛えるとは、この鍛練を指します。
正式には折り返し鍛練と呼びます。
これは、鉄を伸ばして形を作っているのでは無く、鉄を粘土のように練って粘りを出したり強さを出す作業になります。粘土のように、何回も練って、強靭な鋼を作り上げます。
これこそ、鉄を鍛えるという本来の意味なのです。
ちなみにこの折り返し鍛練、現在では刀鍛冶しかしません。理由は、刀鍛冶しか出来ないからです。
鉄をつくる職業の人を、大鍛冶と言います。
そして、この鋼を叩いて製品を形にする人を小鍛冶と言います。